「負け犬の遠吠え」読みました

負け犬の遠吠え

負け犬の遠吠え

「負け犬=未婚・子ナシ・三十代以上の女性」を絶対の定義として、作者自身を含めた「負け犬」について語ったエッセイ本。説明するまでも無いかもしれませんが。しかし、自分で言うのもアレですがベタなとこしか読んでないなー。しかも話題に昇ってる時期をすっかり逃してからなもんだから余計にタチが悪い。
突然ですが重大発表。今までずっと隠してましたが、実は僕は男性です。なので僕はこの本の言うところの「負け犬」でも「勝ち犬」でもどちらでもないので、その点にはあまり興味は無いのですが。じゃあなんで読んでみようと思ったのかというと、どうやらこの本では痛烈なオタ叩きが展開されているらしいという話を聞きまして、それはちょっと読んでみなくては、と。


で、読んでみた感想ですが、オタ叩き(と言うかまあ、おたくについて触れてる所)は数箇所程度でそれほど酷くはなかったです。しかし、「負け犬(と言うか作者)」はオタをこういう風に見てるのかーとなかなか興味深かったので、面白かったところを紹介してみる。

おたく君というのは、ゲームやアニメの女子や、チビッコ女子に対して「萌え」を感じる生きものであって、現実の女子を具体的にどうこうしたいと思う人達ではありません。
(P59 18行目〜)

おたく君は、まかりまちがっても三十女とデートなどしたくないだろうし、三十女としてもおたく君と一緒にイタリア料理屋に行って、生のポルチーニと乾燥ポルチーニの味わいの違いについて話す気には絶対になれない。
(P60 7行目〜)

だってマトモな男の人はもう絶対結婚してるって。今残ってるような人は、ゲイとか素人童貞とか無職とか、何らかの致命的欠落を持ってる人
  (中略)
私達は、流しソーメンの竹のすっごく末端の方にいる人間だってこと、自覚した方がいいよ。
(P102 6行目〜)

流しソーメンとは面白い表現だ。

おそらくオタ夫は、コンピューター上であれ脳内であれ、生身の女性と実際にセックスするよりもずっと激しく大胆で特殊な行為を、日夜繰り返しています。女性から電話番号やメイルアドレスを聞き出し、食事に誘い、思い切ってキスをしてみたら拒まれなかったのでセックスもしてみて……というような手続きを踏んだ通常の男女交際など、まだるっこくて一生できないであろうということは、間違いありません。
(P159 11行目〜)

だいたいあってる。しかしバッサリだな。

実際の肉体は使用せず、コンピューターや雑誌や妄想の中だけで女性を楽しむことができるという意味において、オタ夫は未来的で、知的な人なのです。
(P159 6行目〜)

お、褒められてる! る。る?


これでオタネタの大半を引用したと言ってしまっていい位、オタの話題は少なかったです。まあ本の趣旨は「負け犬」であってオタ叩きではないので当然ですが。


最後に、「オタ夫」から見た全体の感想とか。
自分は「負け犬」ではないのでその立場の人はまた別の感想を持つのかもしれませんが、僕が読んだ限りでは、かなり「負け犬」に優しい作りになっているなあ、と感じました。随所に「負け犬は知的である」とか「負け犬はセンスがある」とか「負け犬は決して容姿は悪くない」とかそんな類の言葉がちりばれまれている。別に「負け犬」を敵に回したくないからわざと良く書いてるわけではなくて、実際にそうなのでしょう。
だからと言って、「負け犬」の敵「勝ち犬」を悪く書いているわけではありません。考え方の違いなどについては様々なことが書かれていますが、少なくとも扱き下ろしている文章は全く無い。「勝ち犬」も楽しく読める本だと思います。
しかし、オタ男を始めとする「オスの負け犬」には遠慮が無い。バッサリやられています。少子化・女性の晩婚化問題に対するこの本の論調は、
「女に恋愛対象として見られないダメな男が増えてるせいで、女が売れ残っている。これが『負け犬』の増える要因で、少子化問題の原因の半分以上はそういう男のせいなのである」
というもの。この本を読んで一番へこむのは、「負け犬」でも「勝ち犬」でもなく「オスの負け犬」なのかもしれません。


あと、読ませる文章としては、思わず笑ってしまうユーモアあふれる箇所が何個もあったのでいい本だったと思います。